結婚して9年目、私は突然、若い女から「夫を寝取った」と訴えられた
裁判の日、彼女は涙を流しながら、私が第三者(泥棒猫)だと主張した。
しかし、私が彼女に婚姻届の写しと、夫の顔を真っ青にさせた「ある書類」を突きつけたとき、すべてが完全にひっくり返った……。
01
結婚して9年。
まさか自分が、不倫の当事者として裁判で訴えられる日が来るなんて、夢にも思っていなかった。
あの日の朝、私が家の前で植物に水をやっていると、配達員がやってきた。 彼は私に、厚みのある黄色い封筒を手渡した。
そこには、裁判所の公印が押されていた。
最初は宛先の間違いだと思った。 しかし、そこに自分の名前を見つけたとき、全身の血が引いていくのを感じた。
被告訴人:アンジェラ・レイエス。
私は数秒間、呆然と立ち尽くした。 これまでの人生で、警察署にすら入ったことがないのに、裁判所から訴状が届くなんて。 しかし、書類を開いて中身を確認した瞬間、何が起きているのかをすぐに理解した。
裁判を起こしたのは、ビアンカ・サントス。26歳。
彼女の訴状には、私が彼女の恋人との関係を壊した「泥棒猫」であると書かれていた。 さらに、証拠として多くの資料が添付されていた。
会話のスクリーンショット。 銀行の振込記録。 レストランでの写真。 旅行中の写真。 ホテルに入っていく写真。 指輪を購入した時の領収書まであった。
私はそれらを一枚一枚、じっと見つめた。 最初は混乱した。 しかし、その後に……
思わず笑いが込み上げてきた。 なぜなら、すべての写真に写っている男は……
私の夫だったからだ。
マルコ・ヴィラヌエバ。 私が人生のほぼ10年間を共にしてきた男。 毎晩のように「仕事で残業だ」と言っていた男。 家族のために定期的に生活費を振り込んできていた男。 そして、年末には私を旅行に連れて行くと約束していた男。
私は、彼らが海辺で仲睦まじく写っている写真を見つめた。 そして、笑わずにはいられなかった。 あの若い女は、自分が「浮気相手(愛人)」であることにすら気づいていないのだ。 彼女は心から、自分が本物の恋人だと思い込んでいる。 そして、私を…… 私を、二人の関係に割り込んできた邪魔者だと信じているのだ。
その日の夜。 マルコからいつも通り電話がかかってきた。 彼の声は優しかった。
「——ご飯はもう食べた?」
私はテーブルの上に散らばった書類を見つめながら答えた。
「ええ」
「こっちはオフィスがすごく忙しくてさ。帰りは遅くなりそうなんだ」
私は静かに問いかけた。
「今、どこにいるの?」
一瞬、電話の向こうが静まり返った。
「オフィスだよ」
私は冷ややかに微笑んだ。 受話器の向こうからは、かすかに波の音が聞こえていた。 音楽。 そして、若い女の笑い声。
彼は、また嘘をついている。
「アンジェラ? 聞いてる?」
私は低く答えた。
「ええ」
「ただ……考えていただけ」
「あなたって、本当に演技が上手ね」
彼は突然黙り込んだ。 しかし、彼が理由を問い詰める前に、私は静かに電話を切った。
結婚して9年間、一度もなかったこと。 私は涙を流さなかった。 問い詰めもしなかった。 なぜなら、彼のような男は…… 私の涙を流す価値すらない人間だからだ。
02
呼び出し状(召喚状)を受け取った後。 私は夫を探し出して問い詰めることもしなかった。 相手の女に連絡を取ることもしなかった。 ただ、静かに準備を進めた。
婚姻届の写し。 家の権利書。 ローンの契約書。 結婚写真。 銀行の取引明細。
調べれば調べるほど、笑いが止まらなかった。 この2年間。 マルコは私たち夫婦の共有財産を使い込んで、ビアンカに貢いでいたのだ。 アパートの家賃。 車の購入費。 旅行代金。 高価なプレゼント。 すべて、私たちが築いてきた財産から支払われていた。
つまり…… 彼女が今享受している贅沢な暮らしの代金を支払っていたのは、この私だったのだ。 それなのに、彼女は私を訴える度胸を見せた。 今年一番の傑作なジョークだ。
裁判の3日前。 ビアンカから電話がかかってきた。 彼女の声は自信に満ちあふれていた。
「アンジェラ?」
「ええ、そうよ」
「あなたに、今のうちに裁判を取り下げるよう忠告するために電話したの」
私はハンズフリー通話に切り替え、洗濯物を畳みながら聞いた。
「取り下げるって、何を?」
「分かっているくせに。マルコはもう、あなたのことなんて愛していないわ。お荷物でしかないって言ってた。どうせ近いうちに別れるのよ。あなたに少しでもプライドがあるなら、身を引いた方がお互いのためよ」
私は思わず吹き出した。 彼女は、私が泣いているとでも思ったのだろう。さらに高圧的な態度になった。
「今になって理解できた? 彼は私を愛しているのよ」
私は冷静に尋ねた。
「付き合ってどれくらいになるの?」
「2年よ」
「その2年の間に……彼はあなたを自分の家族に紹介してくれた?」
沈黙。
「彼から家の鍵を渡されたことはある?」
さらに、沈黙。
「彼があなたの名義にしてくれた財産は、一つでもある?」
やはり、答えはなかった。 私は微笑んだ。
「勝ったつもりでいるの? ビアンカ」
「戦いは、まだ始まってもいないわよ」
そして、私は電話を切った。
03
裁判当日。 ビアンカはシンプルなクリーム色のドレスを着ていた。 いかにも無実の被害者といった風貌だ。 一方、マルコは後方の席に座っていた。 顔は完全に真っ青で、一度も私と目を合わせようとはしなかった。
裁判が始まった。 ビアンカの弁護士が、次々と証拠を提出していく。 写真、メッセージの履歴、ホテルの宿泊記録、送金記録。 すべてが、私を「二人の関係を裂いた悪者」として証明しているかのように見えた。
ビアンカは涙を流しながら証言した。
「私たちは愛し合っていました。結婚の約束もしていたんです。それなのに、あの女が私たちを執拗に追い詰めて、私の幸せを壊したんです!」
彼女は私を指差した。 傍聴席からひそひそ話が漏れる。向けられる視線は、容赦のない侮蔑に満ちていた。 やがて、裁判官が私を見た。
「被告、何か申し立てはありますか?」
私はゆっくりと立ち上がった。 そして、微笑んだ。
「ええ、あります」
部屋全体が静まり返った。 私はバッグを開け、一冊の厚いフォルダーを取り出した。 それをドン!と大きな音を立ててテーブルに置いた。
全員が驚き、ビアンカは眉をひそめた。
「それは何よ?」
私は答えなかった。 代わりに、一通の赤い公的な書類を取り出した。 続いて、家の権利書、法的書類。 そして最後に…… マルコの顔を完全に恐怖で凍りつかせた「ある書類」を、ゆっくりと掲げた。
私はビアンカを見つめた。
「ビアンカ・サントス」
「あなたは私を泥棒猫(不倫相手)と呼びましたね」
「ですが、話を続ける前に……」
「あなたが恋人と呼ぶその男の婚姻届に、なぜ私の名前が『法的な妻』として登録されているのか、説明していただけますか?」
その瞬間。 法廷全体に衝撃が走った。
しかし、マルコが本当に恐れていたのは、婚姻届の存在ではなかった。 なぜなら、私が手に持っていたもう一つの書類…… それこそが、彼が2年間ひたすら隠し続けてきた「犯罪の証拠」だったからだ。
私がその書類の最初の一行を全員の前で読み上げたとき、暴かれるのは彼の不貞だけではなかった。 彼が勤める会社から消えた、数千万ペソ(数億円規模)の使途不明金の行方だった。
法廷内は、激しい衝撃に包まれた。 大声が飛び交ったからではない。 誰もが「恐ろしい真実」が暴かれようとしていることを察し、息をのんだからだ。
私が手元の書類を開くと、マルコは完全に顔面蒼白になり、突然立ち上がった。
「アンジェラ、頼む、やめてくれ!」
裁判官が彼を鋭く睨みつけた。
「着席しなさい!」
マルコの目には明らかな恐怖が浮かんでいた。 嘘がバレた時ですら見せなかった、人生が終わったことを悟った男の恐怖だ。
私は深く息を吸い、最初の一行を読み上げた。
「会社の内部監査報告書によると……過去2年間にわたり、プロジェクト資金から3,000万ペソ(約8,000万円)以上の使途不明金が出ていることが判明しました」
法廷内が騒然となった。 人々がざわめき、ビアンカは困惑してマルコを見た。
「マルコ……何を言われているの?」
マルコは答えられない。私は続けた。
「その資金の大部分を受け取っていた口座は、あるペーパーカンパニーの名義でした。そして、その会社の事実上の所有者は……」
私は書類を掲げた。
「マルコ・ヴィラヌエバです」
ビアンカの表情が崩れ落ちた。
「嘘……そんなはずない……」
しかし、私の弁護士がさらに決定的な証拠を提出していった。 銀行の振込記録、契約書、彼の署名、資金移動のログ。 一つずつ、確実に。言い逃れの余地は一切なかった。
その場にいた全員が理解した。 彼はただの不実な夫であるだけでなく、自らの勤め先から巨額の資金を横領した犯罪者だったのだ。 そして何より皮肉なことに、その盗んだ金の一部が、ビアンカとの贅沢な不倫関係を維持するために使われていた。
ビアンカの目から涙がこぼれ落ちた。 しかし、それはもう「被害者」の涙ではなかった。自分もまた、この男に騙されていたのだと気づいた者の絶望の涙だった。
「マルコ……嘘だと言ってよ……」
彼女は力なく呟いたが、男はただ俯いたまま、誰とも目を合わせようとしなかった。 ましてや、私やビアンカの顔など見られるはずもなかった。
その日のうちに、私に対する訴訟は当然のごとく棄却された。 そして、法廷で明かされた新たな証拠をもとに、マルコは即座に捜査当局へと引き渡され、別件での本格的な取り調べが始まった。
マルコが連行される際、彼は一瞬だけ私を振り返った。 その目は、後悔と絶望に満ちていた。
「アンジェラ……許してくれ……」
しかし、私はただ静かに微笑みを返しただけだった。 疲れ果ててはいたが、心は軽かった。
「9年間、私はあなたを許し続けてきたわ。もう十分よ」
私は二度と振り返ることなく、その場を去った。
2ヶ月後。
私たちの離婚手続きは正式に成立した。 私は夫婦の共有財産の大部分を勝ち取った。 家、投資信託、そして彼が私の同意なしに使い込んでいたことが証明された資金の返還。
私は大喜びしたわけでも、復讐に狂ったわけでもない。 ただ、自分の人生の悲惨な一章を、静かに閉じただけだった。 これで終わりだと思っていた。 しかし、人生とは不思議なものだ。 一つの扉が閉まるとき、別の扉が自然と開くことがある。
裁判から3ヶ月後。 私は長年の夢だった小さなビジネスを始めることにした。 ブックカフェ。 小さな店だが、正真正銘、私だけの店だ。 何年ぶりだろうか、誰かのため(夫のため、家族のため)ではなく、自分自身のために何かをするのは。
ある朝、私が棚に本を並べていると、一人の男性が店に入ってきた。 背が高く、爽やかな笑顔を浮かべ、彼の手には私の大好きな小説が握られていた。
「すみません。あなたがここのオーナーですか?」
私は微笑んだ。
「ええ、そうです」
「お勧めの本を教えていただけませんか?」
彼は少し照れたように笑った。 なぜだか分からないけれど、本当に長い時間を経て、私は心の底から笑うことができた。
それから1年が経った。
店は繁盛し、新しい友人や、新しい夢ができた。 そして、すべての男がマルコのようではないと、行動で証明してくれる新しいパートナーが、私の隣にいた。
一方、マルコは詐欺および横領の罪で有罪判決を受け、刑務所に収監されたと聞いた。 ビアンカはすぐに彼のもとを去り、彼は仕事も、名誉も、それまで築き上げてきたすべてを失った。 一度、彼から手紙が届いたことがあったが、私は開封すらに入れた。 怒っているからではない。もう、彼に対して何の関心もなかったからだ。
最高の復讐とは、自分を傷つけた相手を破滅させることではない。 相手なしで、自分が誰よりも幸せに生きることだ。
私の人生が崩壊しかけたあの日から、ちょうど10年目の記念日。 私はカフェの前に立ち、夕日が沈むのを眺めていた。 隣には、私を心から愛してくれる人が寄り添っている。 彼が私の手を優しく握りしめた。
「何を考えているの?」
私は微笑み、空を見上げた。
「ううん、感謝していただけ」
「もし、あのすべての出来事が起きなかったら……私は自分自身を大切にすることを知らないままだったから」
彼は私を愛おしそうに、優しく抱きしめた。 その時、間違った物語の終わりは、人生で最も美しい章の始まりに過ぎないのだと確信した。
そして今、私はようやく、本当の幸せの中にいる。