離婚して3年。もう恋なんてしないと思っていたのに、彼と出会ってしまった。
離婚して三年が経った。
最初の一年は、毎日が苦しかった。
愛していた人と別れた現実を受け入れることができず、何をしていても心にぽっかりと穴が空いたようだった。
休日は家に閉じこもり、友人からの誘いも断り続けた。
恋愛なんて、もう二度としたくない。
誰かを愛して、また傷つくくらいなら、一人で生きていくほうが楽だと思った。
そうして少しずつ、一人の生活に慣れていった。
朝は好きな音楽を聴きながらコーヒーを飲む。
仕事が終わったら、自分の好きな料理を作る。
誰にも気を遣わない自由な時間。
それは思っていたよりも心地よかった。
だから私は、自分に言い聞かせていた。
「もう恋なんてしない」と。
・・・
彼と出会ったのは、春の終わりだった。
仕事帰りに立ち寄った小さな書店。
欲しかった本を手に取ろうとした瞬間、同じ本に別の手が伸びてきた。
「あっ……すみません。」
同時に手を引っ込めた私たちは、思わず顔を見合わせた。
彼は優しく微笑んだ。
「どうぞ。」
その笑顔が不思議なくらい温かくて、私は少しだけ胸が高鳴った。
それが、彼との最初の出会いだった。
・・・
それから何度も偶然が重なった。
駅前のカフェ。
近所の公園。
週末のパン屋さん。
会うたびに少しずつ会話が増えた。
そして気づけば、彼と話す時間が楽しみになっていた。
ある日、彼は私に尋ねた。
「今度、一緒に食事でもどうですか?」
私は少し迷った。
期待したくなかった。
傷つきたくなかった。
でも――
心のどこかで嬉しいと思っている自分がいた。
「はい。」
気がつくと、そう答えていた。
・・・
その夜、鏡の前に立った私は、自分でも驚くほど笑顔だった。
離婚してから忘れていた感情。
誰かに会いたいと思う気持ち。
誰かのメッセージを待つ時間。
そして、誰かを好きになるかもしれないという期待。
もう恋なんてしないと思っていた。
でも人生は分からない。
傷ついた過去があっても、新しい幸せが訪れることはある。
窓の外では春の風が静かに吹いていた。
私はスマートフォンに届いた彼からのメッセージを見つめながら、小さく微笑んだ。
もしかしたら――
私の新しい物語は、ここから始まるのかもしれない。
🌷 完 🌷